日本在住の依頼人による相続放棄審判請求の受理事例 ― 韓国に入国せずに進めた相続放棄

1. 事件の概要

本件は、日本に居住する依頼人らが韓国の裁判所に相続放棄の審判を請求した事件です。依頼人らは兄弟であり、父親の死亡の事実を後になって知った後、相続放棄の手続を進めるため、チェ・ダウン弁護士に事件を依頼しました。

依頼人らは生活の基盤が日本にあり、韓国に直接入国して手続を進めることが難しい状況でした。そこで、チェ・ダウン弁護士が正式に訴訟委任状および選任届を提出したうえで、依頼人らが韓国に入国することなく手続を終えられるよう、事件全般を遂行しました。

2. 相続放棄の期間:相続開始を知った日から3か月

韓国民法第1019条第1項により、相続人は相続開始があったことを知った日から3か月以内に相続放棄をすることができ、相続放棄は家庭法院に申告する方法によって行います(韓国民法第1041条)。

この期間は、被相続人が死亡した日ではなく、相続人が被相続人の死亡の事実および自己が相続人となった事実を知った日から起算されます。したがって、海外に居住していて死亡の事実を後から知った場合でも、その事実を知った日から3か月以内であれば相続放棄が可能です。ただし、期間が経過すると相続放棄をすることができなくなるため、死亡の事実を知ったら直ちに手続に着手することが重要です。

3. 海外在住の依頼人の相続放棄手続:必要な書類

海外に居住する相続人が韓国に入国せず、代理人を通じて相続放棄を請求する場合、本人の意思に基づく請求であることを書面で明確に疎明しなければなりません。

本件では、次のような書類を準備しました。

・日本国内で発行を受けた印鑑登録証明書
・当該印鑑が押印された委任状
・家族関係および相続関係を確認できる書類
・その他、裁判所への提出に必要な相続放棄審判請求書および添付書類

特に海外在住者の場合、印鑑登録証明書と委任状に押印された印鑑が一致しているか、委任の趣旨が明確に記載されているかなど、形式的要件を正確に備えることが重要です。書類に不備があると補正命令が出されたり手続が遅延したりするおそれがあり、3か月という期間制限のある相続放棄事件においては、このような遅延が依頼人に不利に働くことがあります。

4. 事件の進行および結果

チェ・ダウン弁護士は、依頼人らに対し必要書類の一覧と作成方法をメールで案内し、日本で発行・作成された書類をメールで確認して、不備がないかを事前に検討しました。その後、原本書類の送付を受け、相続放棄審判請求書とともに管轄の家庭法院に提出しました。

その結果、依頼人らは一度も韓国に入国することなく相続放棄の手続を終えることができ、裁判所は依頼人らの相続放棄の申告を問題なく受理しました。

5. 海外在住の相続人が留意すべき点

海外に居住する相続人は、被相続人の財産および債務の状況を把握することが難しい場合が少なくありません。相続放棄は一度受理されると原則として取り消すことができないため、相続財産と債務の規模を可能な範囲で確認したうえで、相続放棄と限定承認のいずれの手続が適切かを判断する必要があります。

また、先順位の相続人が相続を放棄すると、相続権が他の相続人に移る可能性があるため、家族全体の相続関係をあわせて検討することが望ましいといえます。

6. 結びに

相続放棄は、相続開始があったことを知った日から3か月以内に家庭法院に申告しなければならない手続であり、海外に居住する相続人であっても、現地で発行された印鑑登録証明書や印鑑が押印された委任状などを備えれば、韓国に入国することなく代理人を通じて進めることができます。チェ・ダウン弁護士は、海外在住相続人の相続放棄事件において、期間の遵守とともに、海外で発行された書類の形式的要件を正確に備えることが、手続を円滑に完了させるための出発点であると強調しています。

● 執筆者:チェ・ダウン弁護士
相続放棄・限定承認の審判請求、海外居住者(在外国民)の相続手続、相続財産に関する家事事件のご相談